Veritas liberabit vos

Ad augusta per angusta

菅直人元首相、上杉隆君の名誉回復を祝う会で語る

2016年5月19日に憲政記念館にて行われた、上杉隆君の名誉回復を祝う会にて登壇しスピーチをした菅直人元首相の発言内容を文字起こししました。音が不明瞭な点は《聴き取れず》と表記し、補足は()内に示すこととする。
 
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山口一臣「せっかく今この映像を見た直後ですので、突然のご指名ですが、当時の内閣総理大臣菅直人様がこちらにいらっしゃいます。私の視野に入ってしまいましたね。どうでした、上杉隆さんのデマ。当時大変でしたからね。歴史的な和解ですね、今。」
 
川島ノリコ「和解していなかったんですか?」
 
菅直人元首相「つい先日、イタリア料理屋でですね、上杉さんと一緒になって。
まさに当時の話をいたしました。まず一つだけ事実を申し上げますと、今、あの、上杉さんが、東電が本来なら発生から3日後にメルトダウンということを発表すべきであったのにそれをしてなかったということで、或る意味での(東電からの)謝罪が今年あったわけですが。
 
更に、実はですね、3日後ではなくて、3月11日の午後5時15分東電の福島第一の免震塔の中では、あと一時間で、1号機が水位が下がって燃料棒の頭まで下がって…つまり、それ以上下がればメルトダウンが始まるわけです。5時15分に、あと一時間後にはいよいよメルトダウンが始まりますということを、実は言っているんですね。これは、関係者の方、もし良かったら(調べてください)、政府事故調の中間報告の中にその部分が実は入っています。ただ、入り方が非常に…他の中に紛れているので、あまりはっきりしていません。
 
そこで私は先日の原子力委員会で、東電の社長にそのことを確認しました。そしてその上で当時そのことを東電の中で言っているにも関わらず、なぜ政府に伝えなかったんですかと、そういう質問をしたら、『まぁいろいろと混乱していたからでしょう』と言ってました。
 
今(当時配信されたTV動画の中で)上杉さんが政府が政府がと言われていたのは、まぁまさに、私がその時の政府そのものなんですが、あんまりあれこれ言い訳をするつもりはありません。ただ、一つだけ、はっきりと申し上げたいのは、結局、事実か事実でないか、なんですね。政治家の判断というよりも、メルトダウンが起きたか起きないか、あるいは、水がなくなってるかあるかっていう問題なんです。
 
それがわかるのは誰かといったら、それは、東電の現場なんです。それ以外のひとはわかりようがない。ですから東電の現場から正しい情報が伝わってきているか伝わって来ていないか。ですから多分、上杉さんは色んな状況判断から、もうメルトダウンは起きてるんじゃないかと判断されたのは、私は、ジャーナリストとして正しかった、と。
 
ただ、東電としてその時の政府にどの段階で伝えたのかと。伝えなかったんです、ずーっと。ですから、もちろん政府に責任がなかったとは全く申し上げません。
色んな言い方で、皆さんにご迷惑をかけたし、今考えれば、スピーディーなんかでですね、もっと活用して、逃げることを考えれば良かったけども、その活用も、実はきちんとした形での方針がなかったものですから、出来なかったのです。色々失敗はあります。
 
しかし、そういった事を含めてですね、どうも色んな議論のときに、事実と……なんと言いましょう、判断、と、ちょっと違うんです。今、ものすごく事実がわかってきている。ですから、1号機については今お伝えしたように、現実にメルトダウンが始まったのは3日後ではありません。当日の午後6時過ぎです。当日ですよ、3月11日。私が翌朝、《聴き取れず》に行きました。東電からは夜の10時まで水はまだあると言われていたわけです。たっぷりと。それを前提に(現場へ)いったんですが、私が行った時点ではもうメルトダウンが相当進んで、その日の午後には圧力容器の底が抜けメルトスルーしていたそうです。ですから私はまさかメルトスルーまでしているとは思わなかったけれども、しかし、落ちた…山のような、溶けた燃料が、再臨界を起こす危険性があるんじゃないですか、ということを、班目
さんに聞いたんですね。そうしたら、班目さんは『可能性はゼロではありません』という答えだったわけです。まぁそのことをめぐって、私もそろそろ名誉回復をしなくてはいけないことが沢山あるんですが、それは今日の取材ではありませんので。
 
上杉さんにはこれからもですね、私を含め、どの政治家のことも、おかしなことはおかしい、と、言っていただけるよう、頑張っていただきたいと申し上げて、お祝いの言葉とさせていただきます。どうも今日はおめでとうございます。」